週間東洋経済 2017年2月11日号

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目次

BOOKS&TRENDS ネット上にあふれる情報は 一どこまで信用できるのか食 べログのレピューを飲食店が 買収し評価を上げていた事 件。芸能人も巻き込んだステ マ・ペニ 1 オ 1 クション詐 欺。偽の情報から殺人事件の 犯人にされてしまったお笑い 芸人の悲劇など、デマ事件が 起こる背景には、ネットメデ ィア自身の問題とともに、新 聞やテレピなど既存メディア 〈の不信感もあると著者は説 く。また、急速に普及したた めにユ 1 サ 1 のリテラシ 1 カ 追いついていないとも ヤフ 1 、、スマー トニュ 1 ス、日本経済新聞、 ニューズピックスといった五 組みを紹介しながら、ソーシ ャルメディア時代のジャ 1 ナ リズムのあり方を問う ネットメ一ア覇権戦争 偽ニュースはなせ生まれたか 藤代裕之著 ネットメディア覇権戦争 物 - 一 , ースはなせ生まれたか 新刊新書 心いサミング・アップ 藤代裕之 ー書 1 光文社新書 88 円十税 生命科学の 静かなる革命 福岡伸一著 書 新 ナ薯 タ円 ン 0 山中伸弥京都大学教授が ? 細胞の生成に成功して以 降、生命科学は「すぐに役立 っ学問」として期待されるよ うになった。しかし本来は、 社会利益を実現するだけが目 的ではないという 「役立つ」ことへの期待に 著者は危機感を抱く。生命科 学の最先端を行く、自身も研 鑽を積んだ米ロックフェラ 1 大学の研究者たちと語り合、つ ことで、生命科学のあるべき 姿を再確認しようと試みる 人ものノ 1 ベル賞受賞者 を輩出した同大学の科学者た ちは、自然界に隠された謎を どうやって解き明かしたの か。その瞬間の驚きと興奮が 伝わってくる。また、在籍し ている 3 人のノ 1 ベル賞受賞 者を含む 5 人の研究者のイン タピュ 1 も収録する 福岡丱 生命科学の 静かなる単命 人間の体重の約 % を占め るタンパク質。皮膚のプルプ ルを維持するコラーゲンや筋 肉を伸び縮みさせるミオシ ン、血糖値を下げるインスリ ン、酸素を運ぶへモグロビン 新 円 解説ワンダーランド など、形も役目も存在する場 岩 ・所もさまさまた 文庫本の巻末にある「解 近年、プロテオミクス ( タ ~ 説」「、 = そもそもは「無名の新 ンパク質の生命科学 ) の発展 人作家に偉い作家がお墨付き によって、その種類や役割な を与えるためのもの」だった どが急速に明らかになりつつ らしいだが、その原則は崩 ある。ほとんどすべてのタン れ、おそらく日本独特のもの パク質は、生体内で生まれて である文庫解説は、出版界で は消え、消えては生まれる はもはや ( となっている つまり代謝される。タンパク 著者の経歴や時代背景とい 質は一定の期間働くと役割を った基礎情報をはじめ、読書 終えて細胞内で分解され、そ の指針になる情報など優れた れぞれに特有の寿命がある。 日本におけるタンパク質研二解説は、読者に普遍的な「読 み方のヒント」を与えるか、 究の第一人者が、最新の研究 、よほとん どんな解説がつくカ ( 成果を解説し、病気治療への ど「運の世界」だという。読 応用なども紹介する。 者サ 1 ビスのためのいわばオ マケ的な存在であり、「メデ タンバク質とからだ 基礎から病気の予防・治療まで ィアリテラシーを磨いて、解 平野久著 説をも批判的に読むのが最良 の対抗策」とも。 これまでスポットライトか 当たってこなかった文庫解説 の「意外なお宝」を探る タンパク質とからた 礎から病気の一新・第増ーて 0 中公物書 中公新書 88 円十税 文庫解説 ワンダーランド 斎藤美奈子著 ( 1 2017.2.11 週刊東洋経済 104

BOOKS&TRENDS 理論を簡潔かっ平易に和、係留バイアス、損失回避効 真っ向勝負で描き切る 果、性効果、リスク、そし て真の不性 : : : といった経 - 福山大学経済学部教授 済用語の背景」意味の説明が実 中沢孝夫 0 冂 に巧みであり、経済」学ばう 蘭アムステルダム国際空港のとする者にとってよいガイダン 男子トイレでのことだ。小便器スとなっている。また著名な学 の排付近にハエの絵を描い者のプロフィ 1 ルの紹介も実に たら、男たちはその絵を狙って見事である。 済縁学 ジ 経ノ済用を足すようになり、 % 飛び著者は行動経済学を、実験経 大丿経 京や散りが減った、という事例が紹済学、ビッグデータ経済学と並 学い 米はむ介されている。これを「ナッジべて「エビデンス経済学」とく ま ) 門組 税 生専り ( 気づき ) 」というそうだ。 くっている。評者としては濃淡 済 十 缶に 歴合著者はアダム・スミスをはじはどうあれ「エビデンス」が不 1 専員融 ↑究のめとする大家たちの理論と、そ要な経済学があるのかな、とい 書 教→の果たした役割を経済学が「発 0 た疑問は拭えないが、ともあ 科羽客デ 究のグ展」してきた大きな流れの中にれ、本書には、ミルクを先に入れ 」読 学ヒ位置づけながら、キ 1 ワードをる紅茶の淹れ方など、無数に説 著 済済学と パ解説しつつ「行動経済学」のエ得的な事例が紹介されている。 学 ッセンスを描いている 个日のような新書という書籍 済高か大大屮ル 一読するとよくわかるが、フ形式は、昔は専門を初学者にわ コ動田は、究 「行依い京卒英在レ 1 ミング効果、認知的不協かりやすく、かっレベルを落と すことなく著すものだったが、 近年は、論文一本を代わり に膨らませたたぐいの、薄っぺ らなものが多くなり出してい る。これに対して、本書は真っ 向勝負の剛球とたとえられる もともと、合理性のない「コ コロ」の動きを中心に、「啓発 された自己利益」「利他性」と いった、現会を理解するう えで欠かせない概念の解説を含 めて、日は理論を簡潔かっ平 易に描き切っていて見事だ。 ゴ依 コ田 経ロ問 み 間 HIKUMA SHINSHO ーーき ・・・・ ~ 本書では、肩の力を抜いて、平易な言葉で、しかし中身のレベルは落とさ ず、通常の行動経済学よりも広めのテーマを扱うことにしました。・・・経済学の起 源から、必ずしも合理的とは言えない人間の感情的な面が重規されてきたこと を明らかにします。 ちくま新書 1 2 2 8 界 ファーマーから 次世代へのメッセージ 0 Repair the WO 日 冶療する ポール・ファーマージ・ナサン・ウーイゲル・ ビル・クリントン 東日本大震災で陸前高田震災後、 9 代目社長とな 市は 1757 人もの犠牲者った河野通洋氏は従来と同 を出し、壊滅状態となった。じ岩手産の丸大豆と国産小 200 年の歴史を持っしょ麦を使い麹菌の力に信頼を うゆの老舗、八木澤商店も寄せる。その一方で、「町 工場設備は津波にのまれての復興は亡くなった人たち 消減し、命ともいうべきもの敵討ち」と言う河野氏は ろみも失われた。誰もが廃じめ、社員、陸前高田の 業必至と考える中、以前の人々が地元にこだわり続け 酉著味とにおいと風味のしようる地域再生へ向けての知恵 の希ゅを再現するまでの苦闘がと汗は、政治や行政をはる 跡早主題とはいえ、それにとどかに超えて重みを持つ。 奇竹まらぬ広がりが魅力だ。 企業再建への苦悩、社長 と社員の葛藤、支援を続け てくれるライバル会社、奇 跡ともいえる偶然、ドラマ の条件はそろっていて、ち 税 よっとしし = = ロカちりはめら 十 社円れている。力をもらえるド 一ム 0 キュメンタリーだ。 ( 純 ) 陸高田 5 老当篭油蔵 八本澪商店・畔「の物語 ひしお 前著覆興するハイチ」ため年以上にわたって、 を記憶されている読者も少・国際保健のク常識をを覆し なくないだろう。 2010 つつ活動し、「貧困者に 兤年のハイチ大地震は著者を寄り添う医療」を追い求め 厖社会活動家として一躍有名てきただけに、スピーチ集 仞にした。がその前からエイの本書で医師にして人類学 るズ治療で劇的な成果を上げ者の本領を発揮する。 すナた、医療 zoo ( 非政府組テーマは医療に限らず、 ハイチやルワンダなどの現 療織 ) 「パートナーズ・イン・ 治ヘルス」などの取り組みで場でのエピソード、人それ を一中心となっていた人物だ。ぞれの地球市民としての責 7 界フ貧しさゆえに治療を受け任、海外援助や復興政策の 世られない人々の医療支援のあり方など多岐にわたり、 済 いずれも「持続可能な地球 の未来とは何か」を考える洋 ヒントに満ちている 米国が新政権の誕生とと週 税 十もに逆方向に行こうとして 論円いる今だからこそ、著者の 3 評 新 = = ロ葉に耳を傾けたい。

07 非伝統的金融政策 政策当事者としての視点 宮尾龍蔵著 有斐閣 23 円十税 / 2 ページ profile みやお・りゆうぞう 東京大学大学院経済学研究科教授、神戸大学名誉教授。 1964 年生 まれ。神戸大学経済学部卒業。米ハーバード大学にて Ph. D. ( 経済学 ) を取得。神戸大学経済経営研究所助教授、同教授、同所長、日本銀 行政策委員会審議委員 ( 2010 ~ 1 5 年 ) を経て現職。 非伝統的金融政策 屹 = 衂 , 瓏。物心翫。 非伝統的 金融政策 政策当事者とし ( の覆点 宮尾龍蔵著 0 ″は / 宮尾龍蔵著 診 は は は望 2 構造改革の努力は 当 響展 果 ム か 効 十分になされているか策絅効 ズ の と 政 パリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎 洋 作政 金融融な融い定 金金 ( 的金 ( 的安き金 5 かって金融政策といえば、短的的的か論的か証価ベス で 期金利を操作し、長期金利や株統統統の理統の実物、すナ 2 2 の懸マ何日 価、為替レ 1 トに影響を与え伝 章 章章章 章 章 5 て、マクロ経済や物価の安定を多章 3 5 2 4 6 7 図る伝統的政策が主流だった。 第第 第 第第第第 今では財政赤字の 2 倍もの長期 国債を購入し、大量の上場投資 信託 (æegæ) を買い付け、さ物経済やへの効果は十分だしていた。果たして構造改革の らにマイナス金利を適用し、長ったといえるか心もとない。将努力は十分になされたか。金融 期金利をゼロ % にする非伝来、政策の手仕舞いの際に発生緩和で常が上昇すると、それ 統的な政策が取られる。 し得る大きなコストに見合うだに慢心した政府が努力を怠ると ただ、伝統的政策といえどもけの成果といえるのだろうか。 いう構図が続いてはいないか 200 年に満たない霙銀行の興味深いのは、日本がデフレ著者が日銀を退任した後に導 歴史の中で、この年ほど主流均衡に陥っていた可能性がある入されたマイナス金利政策は金 だったに過ぎない。現状の政策と論じている点だ。ゼロ金利政融機関には尖気だったが、理 が長引けば、非伝統的政策が新策の継続を日銀が約東しても、論的にも逆効果だった可能性を たな伝統と呼ばれる日が訪れる経済を均衡させる自然利子率が示す。金融機関の業績に悪影響 可能性がある。奎日は、日本銀大きく低下したため、金融が及ぶと、リスクプレミアムが 行が非伝統的政策を相次いで導はむしろ引き締め的となり、物増し株安や円高をもたらすと主 入した 20105 年に審議委価を反転させるのが難しくなっ張するが、評者も同意見だ。 員を務めた経済学者が、非伝統ていた。緩和的な金融環境を作評者が異次元緩和に開始段階 的政策について理論面を含めわるには、大量の国債購入しか手から反対した最大の理由は、財 かりやすく論じた好著だ。 立てがなかったということか。政規律への悪影響が變必された 量的緩和の効果に疑問を持っ デフレ脱却策としてインフレためだ。事実、年年初以降、 人も少なくないが、个日は長期予想を醸成する政策が支持を集経済は完全雇用にあるが、 国債の大量購入を中心とする政めたのは、クルーグマン氏が提増税は 2 度も先送りされ、毎年、 策は、理論的にも実証的にも効示した理論モデルがきっかけだ景気刺激のための補正予算が繰 果があったと論じる。評者もそった。ただ、モデルはもつ一つり返される。長期金利が低く抑 れを認めるが、レ 1 トや株の選択肢として、構造改革で自え込まれた結果、放漫財政が定 価などにばかり影響が表れ、実然利子率を上昇させることを示着したのではないか、心配だ。 評者 目次